Mind Harmony
生きづらさを手放そう 〜doingからbeingへ〜
今日の話題

映画「MOTHER」

みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

香港はイースターホリデー5連休の最終日、あっという間に貴重な連休が過ぎ去ってしまいました。

さて、今日は、この休み中に観た映画「MOTHER」について話したいと思います。長澤まさみさん主演のこの映画、ご覧になられた方も多いかと思いますが、実際に起きた少年による祖父母殺人事件をベースにつくられたということで、普段滅多に映画を観ない私ですが興味を持ちました。

重なる過去の少年犯罪加害者のとの生い立ち

映画を観終わって真っ先に思い浮かんだのは1968年に起こった「永山則夫」の事件だった(逮捕時、永山は19歳)。なんとも、この17歳の少年と永山との共通点が実に多いこと…

・父親不在の家庭で、母親は育児放棄(ネグレクト)

・極度の貧困、居住地を転々とし各地を渡り歩く生活

・学校に通うことが困難な家庭状況だったため、義務教育も満足に受けていない

・長期にわたる虐待(映画の少年は主にネグレクトと心理的虐待が著しく、永山はネグレクトと身体的虐待が著しかった)

・社会からの孤立

※長期に渡りこのような過酷な環境で過ごしていたということは、脳の扁桃体も萎縮していたであろうし、複雑性トラウマ状態であったのだろうということは容易に想像がつく(もちろん他にも幾つかの要因が複雑に重なり合っているのだろうが)

司法によって裁かれる人の心理

永山事件では永山の逮捕後、精神科医の石川義博医師によって彼の精神鑑定が行われた。石川医師の鑑定書の中で最も注目すべき点は、「犯行当時の精神状態に影響を与えた決定的因子は、出生以来の劣悪な生育環境と母や姉との別離等に起因する深刻な外傷的情動体験であり」(堀川恵子『永山則夫 封印された鑑定記録』岩波書店)と当時はほとんど知られていなかったPTSDの概念が示されたことだった。一審で下された死刑判決は、二審では破棄され無期懲役の判決が下った。(この時の二審の判決に石川医師の精神鑑定書が大きく影響したと言われている)しかし、最終的に最高裁では石川医師の鑑定は採用されことなく、結果「金欲しさ」の動機による殺人として死刑判決が下された。映画の少年も、石川医師が行った永山への精神鑑定で示された内容と重なる部分があるのではないだろうかと思うが、少年の裁判で一貫して争点となったのは「母親による殺害指示があったのか」ということだった。

明日につながる、犯罪心理の解明

決して「精神状態が正常でなかったのだから減刑するべきだ」と言いたい訳ではない。ただ加害少年が罪を犯すに至った経緯を司法的な観点だけに重点を置くのではなく、心理的、精神分析学的な観点も軽視することなくきちんと精査し、事件の本質を明らかにして欲しいと思うのだ。そして、この映画の元となった事件では、母親の存在も忘れてはならない。何故、母親は常識では考えられないような行動をとってきたのか。もしかすると、この母親自体が長期にわたり精神病理的な状態にあったのかもしれない。犯罪が起こった要因を加害少年だけの問題と捉えず、共依存という母親との異常な関係や、その背景要因にある社会が抱える慢性的な問題に目を向け包括的に事件を捉えなければ、事件の本当の解決には繋がらない。起きてしまった事件の事実は変えられないが、事件の原因究明に力を注ぐことは今後同様の犯罪防止に役立てられるはずである。また、それが被害者や残された遺族の方々に対しての最大の誠意になるのではないかと思う。

みなさんは、どんな感想をもちましたか?