最近、メディアなどで「発達障害」に関する相談や、それに関する情報を目にする機会が多くなってきました。それだけ実生活の中で発達の特性に関する悩みを持っている方が増えてきているということだと思うのですが、ネットで公開されている情報の中には内容が曖昧なものがあったり、DSM–Ⅳの表記のままであったりと統一されていない部分が非常に多いなという印象です。注目されてきていることだからこそ「発達障害について正しく知る」ということがとても大切だと感じています。
そして、
「発達障害というのはその状態像による診断であって、病因論的な診断ではない」
ということ、つまり、その人の持っている特性は発達段階やその人を取り巻く周囲の環境などに応じて、特性の表れ方が変化していくということなのです。小さい頃は多動傾向が強かったとしても、成長するにつれて多動傾向がおさまってきたというケースはよくあることです。また、強いこだわりのある特性を持っていたとしても、周囲がそれを理解して受け入れていて本人もそこで困り感を感じていなければ、その人のもつ特性は「障害」ではなくなるのです。私はこの「障害」という言葉があまり好きではなくてなるべく使わないようにしているのですが、「障害」とは、ある環境において特性をもった人とその周囲の人達との相互関係の中で生じる「困難さ」に対して示される言葉であって、決して特性をもつ人を示す言葉ではないのです。しかし、多くの人は、「特性を持つ人=発達障害」と安易に理解し、それが故に誤解や差別が生まれている現実があります。こういった誤解を解くためにも発達障害に関わる者が正しく情報を発信していくことが必要だと感じています。
典型発達(定型・正常・健常)か非典型発達(非定型・障害・病理的状態)であるということではなく、
「誰もが兆候、問題、障害を抱え得る存在なのである」
という理解が広まって欲しいと思っています。
発達障害とは?
発達障害の診断は、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSMに基づいての診断が一般的です。先にも書きましたが、ネット上での情報ではDSM-Ⅳの表記のものが多いですが、現在では19年ぶりに改訂されたDSM-Ⅴを使用しています。DSM-ⅣからDSM-Ⅴへの改訂で発達障害の総称が変わっています。現在は「神経発達症/神経発達障害」といわれ、小児自閉症、アスペルガー障害などを含む「広汎性発達障害」とよばれていたものが「自閉症スペクトラム障害」という一つの診断名に統合されました。「レット障害」は除外され、小児期崩壊性障害は統合されています。「神経発達障害」のカテゴリーは次の様になります。
◉知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)
◉社会的コミュニケーション症/社会的コミュニケーション障害
◉自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害(ASD)
◉注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)
◉限局性学習症/限局性学習障害(SLD)
◉運動症群/運動障害群(発達性協調運動症/発達性協調運動障害、常同運動症/常同運動障害、チック症/チック障害群※チック障害群にはさらに、トゥレット症/トゥレット障害が含まれる。)
この中でも、学童期に多く見られる特性として次の3つがあります。
特徴
●社会的コミュニケーション、他者との相互交流の困難さ
乳児期には1対1の応答関係の遅れが見られる。3項関係の獲得が困難である。また、他者の心を類推し理解する能力の獲得も遅く(又は弱い)、アイコンタクトや表情、身振り手振りなどから他者を理解する非言語的なコミュニケーションの困難さがあるため、他者との相互交流が難しい。
●行動、興味、活動の対象が限られていて、特定のパターンを繰り返す
同一性へのこだわりが強く、頑なにいつもの習慣を守り、変更に抵抗する(変更に対応できない)。反復的な動作や復唱をする。全体を捉えることに困難さがあり部分的にしか捉えられないため、先の見通しが立たず次にどうしたら良いか分からなくなる。触覚過敏、味覚過敏(偏食)、視覚の鈍麻(無頓着)などもある。
特徴
●不注の持続、細部にまで注意を払うことの困難さ
外部からの刺激に反応しやすく、注意が途切れやすい。精神的な集中力が必要な課題に取り組むことを避けたり、嫌がったりする。指示やルールに従和ないことが多く、課題を達成したり、言われたことをやり遂げたりすることが困難。日常的に物忘れが多い。
●多動性と衝動性
手や足を絶えす動かしたり、体をくねらしたりして落ち着いて着席し続けることが困難。過度に走り回ったり、絶えず動き回っている。質問が終わる前に答えを口走ったり、周囲の状況を気に留めず話し続けることが多い。順番を待つことが困難で、他者の邪魔をしたり割り込んだりすることがある。
特徴
●読字や書字表出、文書の意味理解の困難さ
不的確、又は速度が遅く、努力を必要とする読字。意味を理解しながら文書を読むことに困難さがある。綴字(ある語を文字で表す際に、どの音や意味・文法的機能をどの字に用いるかという規則)や書字表出(正しい文法、句読法を用いて、思考を明確に表現する)の困難さがある。
●数字の概念や計算を習得すること、数学的推論の困難さ
数字の意味と数字同士の関係性の理解に困難さがあり、計算を習得することも困難になる。数学的な概念を適用しながら問題をを解決していく力(答えを導く力)の弱さがある。
発達障害を正しく理解して、生きづらさを解消していきましょう。
